「うんちは身体からの“大きな便り”。毎日チェックして!」と説くのは、コンビニのお弁当監修やデイサービス業などに携わる管理栄養士の杉本恵子先生。「なぜ、うんち? なぜ、チェック?」とおどろいてしまうのもごもっとも。しかし、これは杉本先生がおすすめする健康管理法のひとつ。その理由を知れば、あなたのトイレタイムが瞬くまに健康への近道に変わるはず!
におう便は免疫力低下のサイン
杉本先生は、健康のバロメーターとして腸内環境に注目しています。腸は食べ物を消化・吸収したり、便をつくる大事な器官。腸にいる腸内細菌の数は、なんと1千兆個。免疫機能や消化吸収を補助する「善玉菌」、腸内腐敗やガス発生を起こす「悪玉菌」、普段はおとなしいけど体調不良時に悪さをする「日和見(ひよりみ)菌」によって構成されています。
「腸は消化吸収の器官であると同時に、腸管免疫によってウイルスなどから身体を守る器官でもあります。腸管免疫が機能しないと、様々な病気につながります。花粉症、風邪、インフルエンザ……、現代人を悩ませる多くの病は腸管免疫に関係していると思っています」と、話す杉本先生。
腸管免疫系の発達・向上には腸内環境を整える必要があります。もし、善玉菌より悪玉菌が多い状態だと腸内細菌のバランスが乱れ、免疫力が低下。そのとき、身体があるサインを発します。そのサインこそが「うんち」。先生曰く「腸内の調子が悪いとうんちがくさくなる」のだそうです。
食生活の欧米化が腸に与える影響
自分の便の状態は、自分が一番よく知っています。においを毎回比較すれば、腸内の変化がわかるというわけです。「毎日○、△、×でうんちを評価し、手帳のカレンダーに記録しましょう。△や×が続くようなら、不調の兆し」と杉本先生。
しかし、なぜ腸内環境が悪いと便がにおうのでしょう。
「においの原因は肉食中心の食生活に影響していることが多いです。本来、日本人は肉食文化ではありません。しかし現在は、お肉などの高タンパクな食べ物を食べるのが習慣化しています。肉類は、胃でしっかり消化しきれず、そのまま腸内へと至り、悪玉菌の餌になり腐敗が進みます。その結果、うんちやおならがくさくなるんです」
さらに、食の欧米化やライフスタイルの変化にともない、現代人は食物繊維も不足しがち。そのため、腸内の蠕動(ぜんどう)運動が弱くなり、便が停滞しやすくなってしまいます。やがて便秘になり、腸内環境はさらに悪化することに。
「私が普段デイサービスで関わっている高齢者の方たちはほとんどが80代後半。それでもめったに風邪もひきません」
先生の知る、健康な高齢者に共通しているのはみな「粗食」であること。顎のかたちも若者と比べて、しっかりとしていて幅広な人が多いそうです。
「高齢者の育った世代が食べていた食事は、自分の畑や庭で育った作物で占められていました。よく噛む必要のあるごぼうとかれんこんとか、食物繊維が豊富な野菜も多く摂っていた。肉や卵はたまの贅沢で食べるくらい。それでも、日本人にとっては最適な食生活だったのです」
杉本先生のデイサービスを利用する高齢者が日頃食べている食事メニューは、週五日は和食、あとの二日は肉類を主菜にした洋食という内訳。食欲も旺盛で、2020年の東京五輪を観るんだ、と意気込んでいます。