「運動・スポーツと健康づくり」の視点から人生100年時代を生き抜くヒントを探るCHALLENGE100の「100歳運動部」。スポーツ社会学がご専門の鹿屋体育大学・川西正志教授に「動けるシニアになる方法」をお聞きするシリーズも今回が最終回。本記事では、これからの新しいシニア像と、その運動習慣をサポートする指導者サイドのあり方についてお話を伺いました。
これからはシニアへの運動指導にも科学的アプローチが求められる
ー 前回の記事では、これからの新しいシニア層について触れられていました。今から5年ほど経つと、団塊の世代がいわゆる後期高齢者の年齢になっていきますね。
団塊の世代は学校の部活動で運動経験がある人たちです。若い頃に自分がやっていたスポーツをもう一度スタートしてみる人も多く、その点ではシニア期になってから運動習慣を持つことも比較的スムーズではないでしょうか。シニアサッカーやシニアテニスなど、学生時代に取り組んでいたものが趣味になり、そのまま生涯スポーツにつながるパターンです。
また団塊の世代は、500〜600万人もいる同世代のなかで常に競争にさらされてきた世代です。何事も誰かと競うことが基本的には好きな人たちで、自分の主張が強い人も多い。それまでの世代に比べて学歴の高い人が多いのも特徴です。これまでのシニアとは違った個性を持つ層になっていくでしょう。
ー そうなると生涯スポーツを指導する側や介護などに関わる人たちも、アプローチの仕方を考え直す必要がありそうですね。
地域の保健師さんや介護サービスに関わる人と接する機会があると、「団塊の世代は今までのシニアとは違うぞ」ということを今から言っています。学歴も知識もあって、自分の考えをしっかり持っている人たちですから、裏を返せば人の言うことを何でも聞くということはしない。お遊戯みたいなリズム体操をして体を動かしましょう、なんてただ言っても、素直に「はい」とはいかないでしょう。
その代わり、きちんと科学的な裏付けがあって、自分が納得できれば話は違います。「なぜこの運動をするのか」「それによってどんな効果が得られるのか」というエビデンスを示しながら説明して、頭で理解してもらえば、むしろ積極的に取り組むようになるはずですよ。