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【100歳運動部が行く】スポーツ社会学で考える「動けるシニアになる方法」<第2回>元気でいるだけで社会貢献?

運動との関係も人間関係も、深すぎず浅すぎず”てげてげ”に

ー シニア期の体づくりというと、自宅で個人的に取り組むほかに、レクリエーション活動のようなものに参加する方法もありますね。

1回目の話のなかでヨーロッパのスポーツクラブの例を紹介しましたが、コミュニティに参加して居場所を得たり友人をつくったりすることは、肉体面だけでなく精神面でも有益なことです。彼らはただ運動をしに集まるだけでなく、そのグループで食事をしたりお酒を飲んだり、ときには旅行に行ったりと、ソーシャルな人間関係を構築しています。スポーツクラブには、スポーツを一つのきっかけとした地域の親睦サークルのような役割もあるわけです。

日本にも同じようなスポーツサークルはたくさんありますが、スポーツが「きっかけ」というよりは「することそれだけが目的」という感じで、終わったらみんな帰ってしまう(笑)。あまり人間関係の構築という方向には進みませんね。特に男性でこうした傾向が強いと思います。

国立大唯一の体育大学である鹿屋体育大学の川西正志教授

女性は職場以外でも、子どもの学校や習い事のつながりや町内会など様々なコミュニティに所属する機会があって、人間関係をつくるのに比較的慣れている。でも男性は仕事上の付き合いが中心で、定年でリタイアすると急に居場所がなくなるというケースが少なくありません。そのなかでいきなり新しいコミュニティに参加するというのはハードルが高く、うまく適応できずに何となく浮いてしまう人も多い。貯筋運動の体操教室を開催しても、参加者の7〜8割は女性ですよ。「旦那さんと一緒に来てくださいね」と言っても、やはり男性は腰が重いようです。

ー となるとシニアの、特に男性に、もっと運動への参加を促すようなやり方が必要になってきますね。

施策ももちろん必要ですが、これから高齢者になっていく新しいシニア層の場合は、少し傾向が変わっていくかもしれません。ここでもポイントになるのは1回目で触れた「若い時のスポーツ経験」です。

どういうことかと言うと、例えばゲートボールが一気に盛んになった少し前の世代のシニア層にとって、スポーツはいわば「仕事」でした。この世代が若い頃はまだ学校に部活動などもなく、スポーツをレクリエーションとして楽しむ文化に触れないまま社会人となり、定年を迎えてしまったので、ゲートボールも第二の仕事という感覚でとらえてしまった。

ゲートボール

その結果「なんで練習を休むんだ」と参加に義務感が生まれたり、試合に負けると「誰それのせい」と犯人探しを始めたり、本当に職場のような窮屈さが生じてしまう面もありました。とはいえ「これは仕事みたいなものだ」ととらえないことには、どう参加すればいいのか感覚がつかめなかったという部分もあったと思います。

しかしこれからの新しいシニア層というのは、幼い頃も社会人になってからも部活動やサークルなど様々な形でスポーツに親しんできた人たちです。彼らには「スポーツはレクリエーション、義務ではなく気楽に楽しめばいい」という感覚が最初からある。

鹿屋体育大学のある鹿児島の言葉で「適当に」を「てげてげ」と言うのですが、シニア期の運動習慣も人間関係も「てげてげ」にやるのが一番。長続きする秘訣なんです。この「深すぎず浅すぎず」という距離感をうまくつかめる人が増えていけば、高齢者のスポーツ事情も今後変わっていくのではないでしょうか。

国立大唯一の体育大学である鹿屋体育大学の川西正志教授

【Profile】
川西正志(かわにし・まさし)
鹿屋体育大学 教授/体育学修士/スポーツ社会学・生涯スポーツ学

京都市出身。高校までバレーボール部に所属。中京大学体育学部に進学し、当時では珍しい社会体育やレクリエーションの分野での社会貢献を目的とした「レクリエーション部」を体育会に創設。同部は以後40年以上の活動が評価され、愛知県知事表彰、厚生大臣賞、学生団体としては異例の「緑綬褒章」の顕彰も受けている。卒業後は大学院に進み、昭和60年に鹿屋体育大学へ赴任。同大学体育学部の教授、平成13年に日本で初めて設立された生涯スポーツ実践センター長、平成16年からは学長補佐、副学長などを歴任。平成21年から全国の自治体と連携して「動ける日本人育成の貯筋研究プロジェクト」のコーディネータを務め、さらにアジア諸国(台湾・韓国・中国・タイなど)でグローバルな研究も展開している。他に学会、学外団体などで役員・委員を務め、講演活動も積極的に行う。学生教育のモットーは「生きる力、つくる力、やり抜く力」を持ったたくましい人材を育てること。

取材・文/ライター 元井朋子