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【100歳運動部が行く】スポーツ社会学で考える「動けるシニアになる方法」<第1回>三つ子の運動嫌いは百まで?

幼い頃の正しいスポーツ経験が元気なシニアライフにつながっている?

ー 若い時の運動はシニア期の健康にもプラスの影響があるのでしょうか?

老年学という学問の視点からいうと、「若い時に元気なライフスタイルや価値観を持つ人は年齢を重ねても変わらない傾向がみられる」と言われています。また、その逆も同じです。これは人のライフスタイルや価値観、生活習慣など毎日積み重ねてきたものがその後の健康づくりにとっても重要ということを示すものです。運動習慣も若いうちから正しく続ける方がやはりプラスと言えるでしょう。もちろん大人になって一度スポーツから離れ、その後中高年期からウォーキングなどの運動に再び強い関心を持つようになる、というパターンもあり得ます。

いずれにしても言えることは、子どもの頃にスポーツが嫌いになったら、大人になっても嫌いなままということ。ずっと続けようとか、また始めてみようとか、そう思えるのはスポーツに良いイメージがあればこそなんです。幼い頃にネガティブな印象を持ってしまうと、高齢期になってデーサービスなどの簡単なレクリエーションでさえも参加したがらなくなります。若い頃のスポーツ経験は、それだけ後の人生にも大きく影響ということですね。子どもの頃に、いかに正しくスポーツと接するかが重要と言えます。

ー 子ども時代の挫折などでスポーツを嫌いになってしまう人も少なくないですよね。

日本の子どもたちのスポーツの環境は、小・中・高の6・3・3制で分かれている分断型です。小学校の時は学校や地域のスポーツ団体に入って、中学・高校では学校の部活動。それぞれの期間で大会があり、結果を求められることになります。

川西正志教授

たとえば小学校の頃はまだ体が小さくて思うように力が発揮できない子は、どうしても活躍できなかったりレギュラーメンバーに入れなかったりする。指導する側もその期間しか見られないので、どうしても「その時点で活躍できる子」を中心に考えてしまいます。長期的視野で指導することができない。

しかし遅咲きの子もいるわけです。長いスパンで見てあげれば伸びていく素質があっても、その時その時でピークを求められる中では指導者に目をかけてもらえない。特にスポーツを始めた時点でこうした経験があると、運動に対してネガティブな印象を抱いてしまいます。

ー 日本の分断的な指導環境にとってオルタナティブになるような、違った指導のスタイルはあるのでしょうか?

ドイツをはじめとするヨーロッパでは、各地域にあるスポーツクラブに幼い頃から十代半ばまでずっと通うスタイルが定着しています。指導者も一人ひとりの成長を見守りながら一貫して指導できるシステムです。小さいころから運動に親しむマインドを育む上で、ヒントとなる仕組みだと思います。

さらにこうしたスポーツクラブには、子どもたちだけでなく同じ地域の老若男女が通うのも特徴です。競技団体としての側面だけでなく、地域のコミュニティに根差した社交場としても機能しているわけです。これはスポーツの持つ別の役割、「社会生活を営むなかで人間関係を築く」という側面に関わってきますが、このポイントについては後でまたお話ししましょう。

川西正志教授

【Profile】
川西正志(かわにし・まさし)
鹿屋体育大学 教授/体育学修士/スポーツ社会学・生涯スポーツ学

京都市出身。高校までバレーボール部に所属。中京大学体育学部に進学し、当時では珍しい社会体育やレクリエーションの分野での社会貢献を目的とした「レクリエーション部」を体育会に創設。同部は以後40年以上の活動が評価され、愛知県知事表彰、厚生大臣賞、学生団体としては異例の「緑綬褒章」の顕彰も受けている。卒業後は大学院に進み、昭和60年に鹿屋体育大学へ赴任。同大学体育学部の教授、平成13年に日本で初めて設立された生涯スポーツ実践センター長、平成16年からは学長補佐、副学長などを歴任。平成21年から全国の自治体と連携して「動ける日本人育成の貯筋研究プロジェクト」のコーディネータを務め、さらにアジア諸国(台湾・韓国・中国・タイなど)でグローバルな研究も展開している。他に学会、学外団体などで役員・委員を務め、講演活動も積極的に行う。学生教育のモットーは「生きる力、つくる力、やり抜く力」を持ったたくましい人材を育てること。

取材・文/ライター 元井朋子